趣味
私は生きていて何一つ物事を成し遂げたことがない。
すべての物事において平均以下。
褒められたことは一度もない。
あらゆる物事にセンスがないのだ。
かといって頑張るのは嫌いだし、頑張って結果が出ないのも恥ずかしい。
全力で逃げ続けている。日々を騙し騙し過ごしている。
楽だから。
そんな私でも金と時間を人より使っていることがある。
服と靴だ。
服なんざ裸でなければ良い。
真剣にそう思っていた。
何故金を使うようになったのか。
よく覚えていない。
恐らく私の学生時代を知る人物は、私と服なんて最も結びつかないものであると思っているだろう。
最初に物らしい物を買ったのは高2の時、グレンロイヤルの長財布だったと思う。
水が付けば発狂し、艶が出たと喜び、ステッチのほつれと革のひび割れに涙した。
楽しかった。
同時に思った。
あれ?大概のやつ俺より安い財布使ってるぞ、と。
良くなかった。
私の全人類見下しファッションショーが始まった。
服と靴は良い。
容易に相手にマウントがとれる。
例えかけた金額で負けていても、こだわりやスタイルだと言って誤魔化せる。
身につける分には身分も体型も顔も何も関係がない。
素晴らしい。
ここまで受け入れ口が広い趣味があるだろうか。
だが近頃、服と靴も本当に好きな人がいることがよくわかってしまった。
素材、生地、成り立ち、スタイル、合わせ方。
本当に好きな人には自分は遠く及ばない。
消費しかできない自分は、金を出せば良いと思っていて舐めていた服と靴から見放されてしまった。
頭打ちだ。
自分は服と靴を趣味にできない。
そう思った。
次は何を始めようか。